AteloSeriesCollagen for Cell Culture and RNAi Techonology

学会・展示会情報

【学術発表】第40回日本DDS学会学術集会(2024/7/9~7/11 茨城 つくば国際会議場)

2024年07月04日

下記の要項にて学術発表を行います。

発表日時

2024年7月11日(木) 11:45-12:15

会場 つくば国際会議場(現地開催)
演題

細胞膜透過性ペプチドを結合させたアテロコラーゲン/siRNA複合体の細胞内移行に関する研究(ポスター番号:P2-8)

著者

株式会社高研 研究所 井手 賢司、窪田 陸、藤本 一朗

要旨

【緒言】 アテロコラーゲンは生体適合性が高く、再生医療分野において有望な生体材料として期待される。また、カチオン性タンパク質であるアテロコラーゲンは、アニオン性の核酸と静電相互作用で会合して複合体を形成し、生体内での分解を抑制することで効率良くRNA干渉(RNAi)を誘導すると考えられている。なお我々は、アテロコラーゲンをキャリアとしたin vivoトランスフェクション試薬「AteloGene®」を販売している。近年、我々はコラゲナーゼ切断部位を認識して結合するコラーゲン結合ドメイン(CBD)に、細胞膜透過性ペプチド(CPP)の1つであるPenetratinおよびエンドソーム脱出ペプチドS19を連結したCBD-S19-Penetratinを開発し、in vitroでアテロコラーゲン/siRNA複合体が誘導するRNAiを増強することを確認している。そこで今回は、Penetratinを修飾したアテロコラーゲン/siRNA三元複合体の細胞内移行の動向を明確にするため、in vitroで検証を行った。

【実験方法】 各機能性ペプチドをHis-tagリンカーで連結したCBD-S19-Penetratinを大腸菌発現系で調製した。S19を欠損させたCBD-Penetratinは化学合成品を購入した。これらCBD融合タンパク質をPBS(-)に溶解し、1 mM水溶液を調製した。三元複合体は、まずアテロコラーゲンとsiRNAを混合して二元複合体を形成させた後、CBD融合タンパク質と混合することで形成させた。siRNAは、緑色蛍光を抑制する配列を用いた。調製した三元複合体を平面培養した蛍光タンパク質発現がん細胞株(ヒト肝がん由来細胞株HepG2-eGFPおよびヒト非小細胞肺がん細胞株H1299-ZsGReen1)へ添加して、37℃, 5% CO2の条件下で48時間インキュベートした。細胞を蛍光顕微鏡で観察した後、フローサイトメーターで蛍光強度を測定した。

【実験結果と考察】 評価の結果、2種類の細胞に対して二元複合体で処理した群は、未処理条件と比較して約20~30%の蛍光強度の減少が見られた。一方、CBD-S19-Penetratinを含む三元複合体で処理した群では明らかに蛍光強度が減少し、二元複合体で処理した群と比較してもHepG2-eGFPで約65%, H1299-ZsGReen1で約50%の蛍光強度の減少が観測された。それに対し、エンドソーム脱出ペプチドS19が欠損したCBD-Penetratinを含む三元複合体で処理した群では、二元複合体で処理した群と比較して変化が観られなかった。この結果から、Penetratinはアテロコラーゲン/siRNA複合体と結合した場合、エンドソーム脱出機能がないと誘導するRNAiを増強できないことが示された。これまで、PenetratinをTATに置換したCBD融合タンパク質でも同様の結果が得られていることから、CPPによってアテロコラーゲン/siRNA複合体の細胞質への送達量を増加させるには、エンドソーム脱出機能の付加も重要であることがわかった。今後、様々な配列のCBD融合タンパク質を検討してアテロコラーゲンの細胞内への核酸送達機能を向上させることによって、本研究が核酸医薬品の発展に貢献していくことが期待できる。