学会・展示会情報
【学術発表】<終了>第71回高分子討論会(2022/9/7 札幌 北海道大学)
2022年08月22日
下記の要項にて学術発表を行います。
発表日時 |
2022年9月7日(水)15:20-16:00 |
会場 | 北海道大学 札幌キャンパス(現地開催) |
演題 |
伸縮可能な高分子架橋剤の合成改良とコラーゲン糸への応用 (ポスター番号:3Pe073) |
著者 |
株式会社高研 研究所 窪田 陸、成冨 真愛、藤本 一朗 |
要旨 |
【緒言】生体高分子を主成分とするバイオマテリアルの強靭化·柔軟化は、組織再生が可能な医療足場材料などへの応用が期待される。ポリロタキサン(PR)は、直鎖状ポリエーテル及びシクロデキストリン(CD)からなる高分子であり、そのSlide-ring特性により材料の強度·柔軟性が向上することが知られている。コラーゲンは生体親和性の高いタンパク質であり、これまでにゲル·薄膜状態におけるPR架橋が試行されてきたが、不十分であった。腱などの強靭かつしなやかな臓器の再生医療を実現するためには、コラーゲン糸に対するPR架橋は重要課題である。従って、本研究ではアルデヒド基含有PRを用いて架橋したPR強化型コラーゲン糸(Col-PRbCD1)の力学特性を評価した。 【実験】ポリプロピレングリコール及びbCDからなるpseudo-PRをトリアジン誘導体でキャッピングし、次いで触媒的酸化反応を用いてPRbCD1を合成した。合成の確認には1次元及び2次元NMRを用いた。Col-PRbCD1の作製では、まずコラーゲン溶液を中性化処理し、脱泡後、リン酸緩衝液(pH 7)に押出し、成形した。次に、コラーゲン糸を弱塩基性緩衝液に浸漬させPRbCD1を添加後、ヒドリド還元剤存在下37℃で振とうした。最後に、糸の表面を洗浄し、自然乾燥後に枠体へ固定化することでCol-PRbCD1を作製した。作製した糸の力学特性は、島津マイクロオートグラフにより評価した。 【結果と考察】1次元NMR測定より、PRbCD1鎖1本当たりのbCD分子数は約25個と見積もられた。2次元NMR測定では、bCDとポリプロピレングリコール鎖との間に負のNOE相関が観測されたことから、PRbCD1合成が支持された。作製したCol-PRbCD1の力学特性を評価した結果、興味深いことに、Col-PRbCD1は未架橋コラーゲン糸と比較して、破断応力・破断ひずみ・靭性が上昇した。即ち、Slide-ring特性を有するPRbCD1の架橋によりコラーゲン糸の強度·柔軟性を共に高めることに成功したと言える。本発表では、力学特性の更なる向上検討や繰り返し耐久性についても述べる予定である。 |