AteloSeriesCollagen for Cell Culture and RNAi Techonology

学会・展示会情報

【学術発表】<終了>第45回日本バイオマテリアル学会大会(2023/11/6~11/7 兵庫 神戸国際会議場)

2023年11月01日

下記の要項にて学術発表を行います。

発表日時

11月7日(火)13:10-14:10

会場 神戸国際会議場
演題

生体材料を目指した強靭化アテロコラーゲン複合ゲルの開発

ポスター番号:2P-006

著者

株式会社高研 研究所 露久保 淳、窪田 陸、藤本 一朗

 

【緒言】厳しい力学負荷のかかる結合組織の損傷において人工代替材料が求められており、この材料として高強度ゲルが注目されている。ゲル高強度化のアプローチの一つとして、力学物性の異なる二種類の高分子網目を組み合わせたダブルネットワーク(DN)ゲルがあり、外部応力の効率的な散逸により強靭性を発現することが知られている。一方、アテロコラーゲンは低抗原性かつ臨床使用実績を有するため、医療応用可能な生体由来材料の一つである。即ち、DNゲルの原理をアテロコラーゲンに適用すれば強靭な人工代替材料としての展開が期待される。しかし、このようなアテロコラーゲン複合ゲルは殆ど報告されていない。本研究ではアテロコラーゲンと生体適合性ポリマーから成る複合ゲルを作製し、力学物性及び細胞毒性を評価した。

【実験】ウシ真皮由来のアテロコラーゲン溶液を架橋剤のグルタルアルデヒド(GA)と混合し、2枚のガラス板間(間隔: 1 mm)に充填した。コラーゲンの架橋反応を進行させるため、30℃で加熱した。形成したアテロコラーゲンゲルを水で洗浄後、N,N-ジメチルアクリルアミド(DMAAm)と架橋剤、光ラジカル発生剤を含む水溶液に一晩浸漬した。その後、ゲル内部でDMAAmの光架橋反応を進行させるために波長365 nmの紫外光を照射した。形成した複合ゲルの力学物性は引張試験により評価し、応力-ひずみ曲線から各種力学物性値を算出した。また、当該ゲルの生体応用性を検討するため、マウス由来線維芽細胞L929を用いてゲル溶出物による細胞毒性を評価した。

【結果と考察】アテロコラーゲン単独ゲルの引張試験では、架橋剤濃度の上昇に伴い破断応力とヤング率が高くなる一方で破断ひずみは低くなり、一般的な化学架橋ゲルの性質を示した。架橋剤濃度の上昇による破断応力の向上と破断ひずみの低下が現れなくなったGA濃度を用いて、その後の複合ゲル作製を行った。複合ゲルの引張試験では、アテロコラーゲン単独ゲルよりも破断応力とヤング率、靭性の値が上昇した。ポリDMAAmゲルにおける架橋剤濃度が高いほど靭性は向上する傾向にあり、単独ゲルと比較して30倍以上の靭性を有する強靭なゲルを創出できた。細胞毒性試験では溶出溶液濃度に依らず、全ての条件で80%以上の細胞生存率を示した。以上の結果から、本研究で開発した複合ゲルは軟組織に対する人工代替材料への展開が期待される。


発表日時

11月7日(火)13:10-14:10

会場 神戸国際会議場
演題

アテロコラーゲンを用いた小腸オルガノイド培養によるECM混合の効果

ポスター番号:2P-035

著者

株式会社高研 研究所 川村 大輝、藤本 一朗

 

【緒言】オルガノイドとは、生体と同様に多様な細胞群から構成される三次元細胞集合体である。その中でも小腸オルガノイドは、完全培地(Advanced DMEM/F-12+Noggin,EGF,R-spondin)を用いて培養された陰窩絨毛構造を有するオルガノイド(以下、未分化オルガノイド)と分化誘導培地(完全培地+IWP-2,DAPT,BMP-4)を用いて成熟を進めたオルガノイド(以下、分化オルガノイド)が存在する。小腸オルガノイド培養は一般的にマトリゲルを使用するが、アテロコラーゲンでも培養が可能であること、さらにアテロコラーゲンに各種ECMを混合すると物性が変化し、0.1mg/mL ヘパリンを混合するとマトリゲルと同等の弾性率を有することを以前我々は報告している。そこで、本研究では弊社製品3D Readyアテロコラーゲンにヘパリンを混合したゲルを用いて未分化オルガノイド、または分化オルガノイドのどちらにECMが作用するかを詳細に調査した。

【実験】未分化オルガノイドの作製時にECMを混合した効果が存在するかを検討するため、マウス小腸から陰窩単離後、マトリゲル及び3D Readyアテロコラーゲン+ヘパリンに包埋し、ゲル化後に完全培地を加えてオルガノイドを作製した。オルガノイドの形成度は、遺伝子発現解析(qPCR)及び増殖率測定にて評価した。次に分化オルガノイドの培養時にヘパリンを混合した効果が存在するかを検討するため、ヘパリンを混合した3D Readyアテロコラーゲンを用いて分化誘導を行った。分化誘導7日後にオルガノイドを回収し、成熟度を分化マーカーの遺伝子発現量をqPCRで評価した。

【結果と考察】未分化オルガノイドの作製時の結果は、細胞増殖率の測定において日毎の増殖率に違いはなく、総細胞数に差が認められなかった。したがって、未分化オルガノイドの作製においてECMは影響を与えず、マトリゲルと同様に培養できることが分かった。分化オルガノイドの培養を行った際、遺伝子発現量評価では分化誘導前後で吸収上皮細胞マーカーであるVillinを代表に各種分化マーカーの遺伝子発現量が亢進していることから、分化誘導は正常に行われていると判断した。マトリゲルのVillin発現量を基準として、3D Readyアテロコラーゲンはマトリゲルと同等であり、ヘパリン混合3D Readyの発現量が亢進する結果が得られた。この結果から、混合したヘパリンは小腸オルガノイドの分化を促進する可能性があることが判った。今後、混合したヘパリンが分化に関係するシグナル伝達経路の特定を目指して検討を行う予定である。