学会・展示会情報
【学術発表】<終了>日本動物実験代替法学会 第37回大会(2024/11/29~12/1 栃木 ライトキューブ宇都宮)
2024年11月26日
下記の要項にて学術発表を行います。
発表日時 |
2024年11月30日(土)13:20-14:20 |
会場 | ライトキューブ宇都宮 |
演題 |
アテロコラーゲンを用いた再構築ヒト皮膚による炎症誘導モデルの評価 ポスター番号:P-087 |
著者 |
株式会社高研 研究所 佐藤 雄三、藤本 一朗 |
要旨 |
【緒言】3D再構築ヒト皮膚は、動物実験代替法として皮膚の基礎研究や創薬研究などで用いられてきている。これまでに我々は線維芽細胞が分泌するExtra cellular matrix (ECM)を蓄積させるアテロコラーゲン(AC)ベースの再構築ヒト皮膚の作製方法によって、組織収縮を抑えることに成功している。この再構築ヒト皮膚は、ECMの一つである1型コラーゲンの蓄積が確認され、生体のような格子構造を形成する特徴を有することが分かった。今回はこのモデルが炎症疾患誘導モデル(乾癬様炎症、アトピー性皮膚炎)の評価に有用であることを報告する。 【実験】真皮線維芽細胞をアテロコラーゲンで包埋して作製した真皮層上に表皮角化細胞を用いた表皮層を形成させた再構築ヒト皮膚を用いた。この再構築ヒト皮膚を用いて乾癬で特徴的なサイトカイン(IL-1α, IL-6, TNF-α, IL-22, IL-17A)、アトピー性皮膚炎で特徴的なサイトカイン(IL-4, IL-13, IL-31)をそれぞれ培地に添加して炎症を誘導した。この誘導した炎症性疾患はqPCR及び、HE染色、免疫染色により評価した。 【結果と考察】乾癬様炎症誘導モデルでは、遺伝子発現解析により目的の炎症性サイトカイン(IL-1β等)や抗菌ペプチド(DEFB4等)の発現亢進、FLGの発現抑制を評価できた。さらにDSG1の結果から角化細胞間の接着の緩みが示唆された。HE染色では角質層に不全角化と考えられる核の残存が確認できた。免疫染色では遺伝子発現解析と同様にFLG, IVLの発現が抑制されていた。一方、遺伝子発現解析で変化のなかったCLDN1は、免疫染色で蛍光が減弱していた。 アトピー性皮膚炎誘導モデルでは、遺伝子発現解析により目的のNELL2の発現が亢進し、FLGの発現が明確に抑制されていた。また、IVL及び抗菌ペプチド3種もFLGと同様に発現が抑制されていた。免疫染色では遺伝子発現解析と同様にFLG, IVLの発現が抑制されていた。乾癬様炎症モデルと同様にアトピー性皮膚炎モデルでも免疫染色でCK16の発現亢進、CLDN1の発現抑制が示唆された。 本再構築ヒト皮膚モデルは、乾癬様炎症とアトピー性皮膚炎それぞれで特徴的な遺伝子発現やタンパク質発現の変化、組織学的な変化を一部評価可能な有用なモデルであることが明らかになった。乾癬様炎症とアトピー性皮膚炎の各誘導モデルにおいてNELL2、抗菌ペプチドがそれぞれ異なる遺伝子発現を示したため、本再構築皮膚モデルは両疾患誘導モデルを明確に区別可能であることが示唆された。両疾患誘導モデルにおいて皮膚バリア機能の指標の一つであるCLDN1で遺伝子発現に変化は見られないものの、タンパク質発現の低下を示唆する結果が得られた。遺伝子発現に変化は観られなかったため、タンパク質量の制御機構の関与が推察されるこれにはタンパク質量の制御機構の関与が推察されるため、今後さらなる検討を進める予定である。 |