AteloSeriesCollagen for Cell Culture and RNAi Techonology

学会・展示会情報

【学術発表】<終了>第72回高分子討論会(2023/9/26~9/28 香川大学 幸町キャンパス)

2023年09月13日

下記の要項にて学術発表を行います。

発表日時

2023年9月27日(水) 14:00-14:40

会場 香川大学 幸町キャンパス(現地開催)
演題

環動高分子によるアテロコラーゲン糸の強靭化(ポスター番号:2Pd086)

著者

株式会社高研 研究所 窪田 陸、藤本 一朗

要旨

【緒言】生体高分子で構成されるバイオマテリアルの高強度化・柔軟化は、再生医療用足場材料等への応用が期待される。アテロコラーゲンは低抗原性かつ臨床使用実績を有しているため、再生医療用足場材料の有望な候補である。しかし、強靭性を有するアテロコラーゲン材料の創製と医療応用は未だ挑戦的課題である。最近我々は、独自合成したアルデヒド基を有するポリロタキサンを架橋剤として用い、アテロコラーゲン糸の力学特性の向上を報告した (Polyrotaxane-Reinforced Atelocollagen Threads, PRATs) [1]。本発表では、新たにポリロタキサンの軸ポリマー鎖長及びシクロデキストリン包接率を変更しPRATsの力学特性に及ぼす影響を検討した結果、更なる強靭化を達成したので報告する。

【実験】ポリエチレングリコール (Peg) を軸ポリマーとする包接率20 mol%のPR (PegPRaCD1) 及びPeg-ポリプロピレングリコール (Ppg)-Pegトリブロック共重合体 (Pluronic) を軸ポリマーとする包接率6 mol%のPR (PluPRbCD1) を合成した。1H NMR測定におけるアルデヒド基の検出では、1,1-ジメチルヒドラジンを標識試薬として用いた。PRATsは下記の方法で作製した[1]: まず、アテロコラーゲン溶液をリン酸緩衝液 (pH 7) に押出し糸を成型した。次に、アテロコラーゲン糸 (AtCol) は各種PRを溶解したホウ酸緩衝液 (pH 8.5) に浸漬させ、2段階還元的アミノ化により架橋した。最後に、糸の表面を洗浄し自然乾燥後、枠体固定することでPRATsサンプルを作製した。力学特性は島津マイクロオートグラフを用い湿潤条件下で評価した。

【結果と考察】NMR測定の結果、シクロデキストリン包接率とアルデヒド基導入率が一致したことから所望のPRを合成できていることを確認した。合成確認は、FT-IR測定及びTGA測定からも支持された。湿潤条件下でPRATsの引張試験を行った結果、AtColをPegPRaCD1及びPluPRbCD1で架橋することにより力学特性が向上することが解った。一方、いずれのPRにおいても有意な分子量依存性は観られなかった。興味深いことに、包接率6 mol%を有するPluPRbCD1の架橋により、PRATsの力学特性の更なる向上が観られた。即ち、PRATsの強靭化にはPR軸鎖の高分子量化よりも低包接率化の方が重要と考えられる。本発表では、上記の結果と考察に関し詳細に述べる。

[1] R. Kubota, M. Naritomi, and I. Fujimoto, “Synthesis of a stretchable polymer crosslinker for reinforced atelocollagen threads”, React. Funct. Polym., 2023, 182, 105462.

DOI: https://doi.org/10.1016/j.reactfunctpolym.2022.105462