AteloSeriesCollagen for Cell Culture and RNAi Techonology

学会・展示会情報

【学術発表】<終了>第95回日本組織培養学会(2023/8/31~9/1 岡山 岡山大学)

2023年08月25日

下記の要項にて学術発表を行います。

発表日時

2023年9月1日(金) 10:40-11:30

会場 岡山大学鹿田キャンパス Junko Fukutakeホール(Jホール)
演題

再構築皮膚モデルにおける組織収縮抑制に関する検討(ポスター番号:P-3)

著者

株式会社高研 研究所 佐藤 雄三、藤本 一朗

要旨

【緒言】再構築した皮膚全層モデルは作製する過程の中で培養時の組織収縮は課題の一つである。組織が再構築されて行く段階で細胞同士が引き合う現象は正常なものであるが、その収縮が大き過ぎる場合はアッセイに供する際の障害になりかねない。そこで、我々は線維芽細胞が分泌するExtracellular matrix (ECM)成分に着目し、真皮層を長期培養し線維芽細胞が分泌するECMを組織内に蓄積させることによる組織収縮抑制の方法とその要因について検討した。

【実験】ネイティブコラーゲン溶液(NC)もしくはアテロコラーゲン溶液(AC)にヒト皮膚線維芽細胞を懸濁した後、セルカルチャーインサートに充填して真皮層とした。その真皮層の培養期間を7日間、14日間の2条件とし、その後、真皮層の上部にヒト表皮角化細胞を播種し、表皮層を作製した(液内培養;4日間、気液界面培養;7日間)。合計の培養期間が18日間を通常培養、25日間を長期培養とした。作製した皮膚全層モデルは外観の観察、凍結切片及びRNA抽出に供した。凍結切片はヘマトキシリン・エオシン(HE)染色及び免疫蛍光染色を行い、抽出したRNAはRT-qPCRによる遺伝子解析を行った。

【結果と考察】作製した皮膚全層モデルの外観からNC, ACいずれの皮膚全層モデルでも長期培養することで組織収縮の抑制を観察できた。また、HE染色によりすべての条件で表皮角化細胞の重層などを確認でき、皮膚全層モデルの構築を確認した。我々は組織収縮抑制の要因をECM成分の量や構造と考え、凍結切片をECM成分(COL1, COL4 FN)と表皮分化マーカー(CK10, CK14)の免疫蛍光染色を行った。その結果、NC, ACいずれでも通常培養に比べて長期培養でCOL1, COL4の蛍光が強いことから、この2成分が組織収縮抑制に関与していると推測した。またRT-qPCRによる遺伝子解析ではNC, ACいずれでも通常培養に比べてType1 Collagenの産生に関与するCOL1A1, COL1A2の発現が統計的有意に増加していた。一方でCOL4の発現では統計的有意差が確認できなかった。皮膚全層モデルでは恒常的に張力を加えることで線維芽細胞にメカニカルストレスが掛かり、COL1A1やCOL1A2の遺伝子発現が誘導されるとの報告があることから、本結果は長期培養によるECM成分の蓄積によって細胞が恒常的に伸展した状態となり、結果的に線維芽細胞に対するメカニカルストレスが生じてCOL1A1やCOL1A2の遺伝子発現が誘導されたと推察した。

今回、組織収縮抑制の要因やACによる皮膚全層モデル作製の可能性を示したことで今後の再構築皮膚に関連する研究に資することを期待している。