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2017年11月13日

AMEDも注目するメカノバイオロジー

メカノバイオロジーの研究推進

2015年度より、「メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出」の研究開発領域が、AMEDの革新的先端研究開発支援事業として発足しています(AMED-CREST、PRIME)。本支援事業の推進により、生体が物理的刺激(メカニカルストレス)をどのように感知し、応答するのかについて知見を深めることで医療応用につなげ、また同時にそれらの現象を高精度に計測する基盤技術の発展にもつながると期待されています。

メカノバイオロジー機構の解明による革新的医療機器及び医療技術の創出 採択課題リスト
採択年度 研究開発課題名(AMED-CREST課題のみを抜粋) 所属機関 研究者名
2017 細胞―基質間の力を基盤とした細胞移動と神経回路形成機構の解明およびその破綻による病態の解析 奈良先端科学技術大学院大学 稲垣直之 教授
2017 周期的圧刺激によって制御される血管新生のシグナル伝達機構の解明 ―非接触超音波を用いた創傷治療法の開発を目指して― 日本医科大学 小川令 教授
2017 心筋メカノバイオロジー機構の解明による心不全治療法の開発 東京大学 小室一成 教授
  (その他PRIME課題が9件採択)    
2016 腱・靱帯をモデルとした細胞内・外メカノ・シグナルの解明とその応用によるバイオ靱帯の創出 東京医科歯科大学 淺原弘嗣 教授
2016 機械受容応答を支える膜・糖鎖環境の解明と筋疾患治療への展開 神戸大学 金川基 講師
2016 がん-間質におけるメカノバイオロジー機構の解明 北海道大学 芳賀永 教授
2016 筋萎縮の病態に迫るミトコンドリアのメカノバイオロジー 東北大学 東谷篤志 教授
  (その他PRIME課題が8件採択)    
2015 細胞質から核に至る力覚機構の解明と新技術開発から医学展開を目指す基盤研究 東北大学 小椋利彦 教授
2015 幹細胞の品質保持培養のためのメカノバイオマテリアルの開発 九州大学 木戸秋悟 教授
2015 骨恒常性を司る骨細胞のメカノ・カスケードの解明 東京医科歯科大学 中島友紀 教授
2015 内耳による音のナノ振動の受容・応答機構の解明と難聴治療への展開 新潟大学 日比野浩 教授
2015 血管疾患発生機構の解明に向けた組織・細胞・核のメカノトランスダクションの統合解析技術の開発 名古屋大学 松本健郎 教授
2015 血管のメカノバイオロジー:血流センシングと脳動脈瘤形成の分子機構 東京大学 山本希美子 准教授
  (その他PRIME課題が13件採択)    
国立研究開発法人日本医療研究開発機構ホームページ(www.amed.go.jp/koubo/010720170310_kettei_kadai03.html、https://www.amed.go.jp/content/000004945.pdf)を基に当社にて作成

生体におけるメカニカルストレス

メカニカルストレスは日々の生活の中でも起きています。例えば、咀嚼運動や歯列矯正等による口腔内での刺激、呼吸による呼吸器での伸展刺激や気流によるずり応力などが挙げられます。また、循環器では血流によるずり応力や血圧および拍動による伸展刺激、運動器では日常の動作や運動による刺激があります。恐らく皆さんも一度は耳にしたことがある、宇宙空間に長期間滞在した宇宙飛行士の筋肉や骨が退縮する現象も、微小重力環境下でのメカニカルストレスの不足が一因とされています。

細胞レベルでのメカニカルストレスの評価

上述の様な現象を細胞レベルで理解しようと、シリコン製チャンバー上に細胞を播種して伸展刺激を加える培養装置も市販されており、伸展刺激により細胞骨格が変化することも示されています。その他にもコラーゲンゲルやコラーゲンスポンジの中で三次元培養された細胞に対して、繰り返し圧縮刺激を加える事例も報告されており、皮膚や関節等におけるメカニカルストレスの影響評価も進められています。

組織の硬さと培養基質の硬さ

一方、動的なメカニカルストレスを加える実験のみではなく、細胞培養時の基質の硬さにも注目が集まっています。一般的な細胞培養用のプラスチック器材やガラス器材は1GPaを超える硬さですが、脳の様な柔らかい組織は0.1-1.0kPa、筋肉は8-17kPa、骨の様に硬い組織でも25-40kPaであり、培養器材と実際の組織の硬さは大きく異なります。そのため、近年は硬さの異なるポリアクリルアミドゲルやコラーゲンゲルを用いた細胞培養に関する報告がされており、基質の硬さが幹細胞の分化の方向性やがん細胞の悪性化に影響を与えることも示唆されています。 組織、コラーゲンゲル、培養器材の硬さ

 

細胞自体の硬さ変化

メカノバイオロジーのもう日一つの視点として、細胞自体の硬さ変化が挙げられます。がん細胞の硬さが正常細胞と大きく異なるという報告が相次いでおり、がん診断のマーカーとしても注目されています。しかし、従来一般的に使用されてきた原子間力顕微鏡(AFM)による解析は時間を要するものでした。最近、米国デューク大学のWax教授らのグループが、2種のレーザーとカメラを用いることで非接触かつハイスループットに硬さの評価を行える手法を発表しており、本研究の医療応用も期待されています。

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