核酸医薬開発の世界での進展 | 株式会社高研

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2018年02月14日

核酸医薬開発の世界での進展

核酸医薬開発の再興

核酸医薬は、低分子医薬品のように化学的な合成が可能であり、かつ抗体医薬の特異性の高さを併せ持つと期待され、多くの企業が研究開発を進めていましたが、一時は複数の海外大手製薬企業が核酸医薬開発を停止するなど、しばらくの間停滞ムードが漂っていました。その理由の一つとして、目的の部位へ核酸を届けるためのドラッグデリバリーシステム(DDS)が未成熟であったことが挙げられます。しかし、近年は核酸自体に修飾を加えることで生体内での安定性を高めるなど、DDS担体を用いない核酸医薬の研究も進み、核酸医薬の開発が再度盛り上がりを見せています。

核酸医薬の種類

核酸医薬には複数のタイプが存在しますが、ここでは5つに絞って比較してみたいと思います。まず、一口に核酸医薬と言ってもmRNAなどの核酸を標的にしたものやタンパク質を標的にしたもの、免疫賦活を狙ったものなどがあります。また、核酸医薬は、細胞膜を透過しにくいため、DDSと合わせて使用されることが一般的なようです。

承認済み・開発中の核酸医薬品

以下の表のとおり、2018年1月現在では海外企業による7製品が承認を得ており、そのほとんどはアンチセンス医薬品です。体内での滞留性を高めるためにほぼ全ての製品において、何らかの修飾が施された核酸が使用されています。また、当初は患部に直接注入する局所投与製品の承認が続いていましたが、現在では皮下投与や静脈内投与製品も上市されています。尚、Defitelioについては化学合成された核酸ではなく、ブタ腸組織由来の一本鎖オリゴヌクレオチド多分散混合物のため、その他として掲載しています。

承認済みの核酸医薬品
企業 名称 一般名 核酸の種類 対象疾患 修飾等 投与経路
Novartis社
[Isis Pharmaceuticals社(現Ionis Pharmaceuticals社)と開発]
Vitravene
【販売中止】
fomivirsen アンチセンス CMV 性網膜炎
(AIDS患者)
リン酸部修飾
 S化
硝子体内
Valeant Pharmaceuticals社
[EyeTech Pharmaceutical (現Valeant Pharmaceuticals)とPfizer社が開発]
Macugen pegaptanib アプタマー 滲出型加齢黄斑 変性症 5’末端修飾
 PEG化
糖部修飾
 2′-F
 2′-OMe
硝子体内
Kastle Therapeutics社
[Isis Pharmaceuticals社(現Ionis Pharmaceuticals社)とGenzyme(現Sanofi Genzyme社)が開発]
Kynamro mipomersen アンチセンス ホモ接合型家族性
高コレステロール血症
リン酸部修飾
 S化
糖部修飾
 2′-MOE
皮下
Sarepta Therapeutics社 Exondys 51 eteplirsen アンチセンス デュシェンヌ型
筋ジストロフィー
モルフォリノ核酸 静脈内
Biogen社
[Isis Pharmaceuticals社(現Ionis Pharmaceuticals社)と開発]
Spinraza nusinersen アンチセンス 脊髄性筋萎縮症 リン酸部修飾
 S化
糖部修飾
 2′-MOE
髄腔内
Dynavax Technologies社 Heplisav-B Hepatitis B
Vaccine (Recombinant) Adjuvanted
CpGオリゴ B型肝炎 リン酸部修飾
 S化
筋肉内
その他            
Jazz Pharmaceuticals社
[Gentium社(現Jazz Pharmaceuticals社)が開発]
Defitelio Defibrotide ブタ腸組織由来オリゴヌクレオチド 肝中心静脈閉塞症 静脈内

 注:上記の表は当社が独自にまとめたものであり、最新情報が反映されていない可能性があることご了承ください。

7製品と聞くと、核酸医薬の開発はまだまだ進んでいない印象を受けるかもしれませんが、承認申請中は5件、フェーズ3は12件、その他化粧品成分として1件の開発が進んでいます。少し前のデータになりますが、特許庁の調査によると2015年10月末時点では141件の臨床試験が行われていましたが、現在製品化に近づいている案件が20件弱にも及ぶことから、今後の核酸医薬の発展に期待を持てます。また、開発品の中にはsiRNAも増えてきており、多様な核酸医薬の時代がやってきそうです。

主な開発中の核酸医薬品
企業 名称 核酸の種類 対象疾患 開発ステージ
Alnylam社 Patisiran siRNA 遺伝性ATTRアミロイドーシス 承認申請中
  Inclisiran siRNA 高コレステロール血症 P3
  Fitusiran siRNA 血友病および稀な凝固因子欠乏/異常症 P3
  Givosiran siRNA 急性肝性ポルフィリン症 P3
Gene Signal社 Aganirsen アンチセンス 移植患者における角膜血管新生 P3
  Aganirsen アンチセンス 虚血性網膜中心静脈閉塞症 P3
Geron社 Imetelstat 脂質結合オリゴ 骨髄異形成症候群 P3
Ionis Pharmaceuticals社 Alicaforsen アンチセンス 回腸嚢炎 承認申請中
  Inotersen アンチセンス 遺伝性ATTRアミロイドーシス 承認申請中
  Volanesorsen アンチセンス 家族性カイロミクロン血症 承認申請中
  Volanesorsen アンチセンス 家族性部分型リポジストロフィー 承認申請中
Achive Life Sciences社 Custirsen アンチセンス 非小細胞肺がん P3
Quark Pharmaceuticals社 QPI-1002 siRNA 臓器移植後臓器機能障害 P3
  QPI-1007 siRNA 非動脈炎性虚血性視神経症 P3
Sarepta Therapeutics社 SRP-4045 アンチセンス デュシェンヌ型筋ジストロフィー P3
  SRP-4053 アンチセンス デュシェンヌ型筋ジストロフィー P3
Sylentis社 Tivanisiran siRNA ドライアイ症候群 P3
その他        
RXi Pharmaceuticals社 RXI-23 siRNA 化粧品成分として開発 消費者テスト

 注:上記の表は当社が独自にまとめたものであり、最新情報が反映されていない可能性があることご了承ください。

核酸医薬のためのDDS研究

さて、先に挙げた承認品のKynamroは、オリゴ核酸が肝臓や腎臓等に集積しやすい性質を利用して皮下投与、Exondys 51は、オリゴ核酸の取り込みが亢進するデュシェンヌ型筋ジストロフィーの筋細胞の性質を利用して静脈内投与されており、いずれもDDS担体は使用されていません。しかし、上述の様な手法は全ての標的組織や疾患に当てはまるわけではないため、効果的に核酸を届けるためのDDSの研究が進められており、例えばPEG化により血中滞留性の向上したリポソームや、ビタミンA修飾により肝星細胞への標的指向性が向上したリポソームなどが知られています。また、アテロコラーゲンDDSの研究も進められており、リポソームで懸念されるような高い肝毒性は認められず、また、核酸と複合体を形成すると血管透過性を向上させることが示されています。尚、アテロコラーゲン製DDSは、徐放性トランスフェクション試薬「AteloGene」として販売中です。

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